ほぼ月刊IVL通!

中国アイデンティティファイブプロフェッショナルリーグの記事を中心に細々と更新しております。

MRCはMiracleだったのか 2021夏

例え絶望の中でも、絶対に奇跡を諦めるな

 

 COAⅣを最後にメンバーチェンジを行い、サバイバー、そしてハンターを迎え新たなメンバーで2年目の夏季予選に臨むことになった彼ら。しかし、そんな彼らに連敗という大きな壁が立ちはだかることとなる。勝てないという絶望の中、彼らが見出したものとは何だったのか。彼らに今までのような奇跡は訪れたのか。

 

第3期MRC メンバー紹介

 

・小程 XC

 旧MRCから唯一残ったメンバーであり、MRCのメインハンター。今シーズンは絶不調。今まで以上に勝てない苦しみを経験することとなる。

 夢の魔女を得意とする。他の使用キャラは破輪、血の女王、“使徒”、彫刻師等。お調子者でチームのムードメーカー。MRCの太陽。

 

・小迪 XiaoD

 MRCの司令塔。ファンから老師、公主と呼ばれるランク上位の人気プレイヤー。使用キャラは機械技師、祭司、冒険家、占い師等。

 俺がファーストチェイスを引けば必ず勝利する、と豪語する程、チェイスの駆け引きが上手い。チェイスをしながら指示出しができる、稀有な存在。

 

・清唱 QingC

 小迪の相棒にしてMRCのパパ。使用キャラは傭兵、占い師、野人、"囚人"等。

 どっしり構える縁の下の力持ち。やや感情の沸点の高い小迪を窘める役目も受け持つ。無傷救助が得意。

 

・老怪咖 Weirdo

 危なっかしく何となくハラハラするプレイが多いが、決めるときはしっかりと決める。使用キャラは主にオフェンス、傭兵の救助キャラ。

 高身長に整ったクールな外見とは真逆で、おしゃべりで歌うことが大好き。小程と合わせてチームのムードメーカー。努力家。予選後半からは指示出しも受け持つ。

 

・奈奈 Nanako

 アマチュア戦隊からMRCへ移籍した新サバイバー。主にチェイスを担当。使用キャラは画家、調香師、祭司、占い師、昆虫学者等。

 いつも飄々としているMRCの二代目ポーカーフェイス。彼が画家を使用することで活路を見出したことがMRCに光を与えた。

 

・艾克 1K

 アマチュア養成所である、第五学園出身の新サバイバー。秋季後半からは清唱に代わりメインサバイバーとして試合に参加することが多くなる。使用キャラは傭兵、昆虫学者、バッツマン等。

 調理系の専門学校に通っていたこともあり、料理が得意。自分で作った料理をWeiboに上げたりしているが、映える写真を撮るのはどうやら苦手な様子。

 

・日暮戈薇 Kagome

 アマチュア養成所である、第五学園出身の新ハンター。第五学園内では最強ハンターであり、その能力を期待されMRCに加入。使用キャラは破輪、夢の魔女、彫刻師、ガードNo.26。

 控え目で大人しいのかと思いきや、緑の怪物の被り物を被ってCC最強音に参加するなど、意外とおちゃめな面も。試合中は眼鏡を外す派。

 

 2021年夏季、彼らを最も苦しめたのは何よりも新しくなったBAN・PICK。彼らがそれを理解するまでに予選の前半を使ってしまったことが大きな要因であった。BAN・PICKは勝敗を大きく左右するものであるし、彼らなりにいろいろ相談し考えて決めているとは思うのだが、試合が始まる前の心理戦で対戦相手に有利にさせてしまっていたということが、彼らの連敗を決定づけてしまう一つの原因でもあった。試合を見ているうちに分かってくることだが、サバイバーは手堅い編成というのがあり、どのチームをそれを理解し選択していた、しかしMRCは得意としているキャラクターを選択することを優先するあまり、それを自ら手放していた編成さえもあった。

 

 他の原因としては、メインハンターである小程の不調だ。彼は去年から度々不調に悩まされてきたが、今回は今までにないほどの絶不調で、彼の調子が悪かったことも連敗の原因だった。ハンターは二人いるのに絶不調の小程ばかりが試合に出ていたのは、こればかりはどうしても筆者の予測になってしまうが、戈薇がまだ若く公式試合の経験が少ない選手であり、試合に出せるまでのレベルには達していなかったからかもしれない。彼の練習量を増やすなどチーム内で意識を変えるべきだったのではないかと、今ではそう感じてしまう。

 

 もう一つ、原因はある。ハンター不調の陰に隠れてしまっているが、サバイバーの不調。今シーズンから奈奈がメインに入ったが、彼が画家という活路を見出すまではサバイバーの足並みもなかなか揃わなかった。選手一人ひとりに合うキャラクターとそうではないキャラクターがある、彼らはそれを見つけ出すまでにも時間がかかってしまったのではないだろうか。

 

 連敗が続けば、彼らの士気が下がるのと同時に応援しているファンの熱も冷めていく。負けたことに対する叩きも相当なものであり、ファンでさえも彼らが勝利するということを諦めているようにも見えた。これを書いている筆者も、夏季予選で彼らが一度でも勝利するということはないのかもしれないとさえ考えていたし、今までできていた彼らを信じるということが、これほどまでに難しく辛いものなのか、ということを改めて感じた。前半を全敗で終えた際、後半は彼らのホームが多いから勝てるのではないか、後半で全勝すればプレーオフに進出できるのではないかと思い、淡い期待を抱いていたものの、後半初戦のGr戦で逆転負けしてしまったときに、もうこれはどのチームにも勝てないのではないか、とまで考えてしまったほどだった。彼らは正に絶不調としか言いようがなかった。

 

 後半2戦目、Wolves戦。Wolvesはサバイバーが特に優れているチームであり、チームも絶好調。そのため、MRCは前回に引き続き負けるのではないか、と予想されていた。この試合はMRCがホームであり、最初のマップ選択権はMRCが持っていた。彼らが選択したのは軍事工場。夢の魔女が得意とするマップだ。第1ラウンドはWolvesが先行。MRCがPICKしたサバイバーは、占い師、オフェンス、"囚人"、そして画家。WolvesのPICKは得意としているガードNo.26。ファーストチェイスは"囚人"。所謂爆速パと呼ばれているこの編成で狙われてしまうときついと感じるキャラだが、使用しているのは清唱。チェイスもできる彼がなんとか他のメンバーの解読時間を稼いでいく。椅子に吊られた"囚人"を、ハンターが油断し移動している最中にオフェンスが無傷救助。ガードNo.26が相手で無傷救助ができるのは大きい。"囚人"が再度吊られてしまうが、使い鳥をつけたオフェンスが再度救助を成功。ハンターが"囚人"を飛ばそうと追いかけるも、オフェンス、そして画家に気を取られている間に通電。引き留めるがついていたものの、一度もアイテムを使用していない画家が上手くアイテムを二度使用しハッチ逃げを決め、4逃げを達成できたことが彼らの今シーズン初勝利への道を作り上げた。

 

 しかし、相手もそう簡単に勝ちを譲ってはくれない。ここでも小程はやはり不調。得意である夢の魔女を使用し、早めに機械技師を飛ばし、2吊りはできそうな所を祭司に稼がれてしまい、通電後引き留めるで狙うキャラを間違えた小程はラグビーボールが残っていたオフェンスにハッチを与えてしまい、結局3逃げされててしまう。

 

 第2ラウンドは聖心病院。相手の得意なマップだ。引き続きWolvesが先行。MRCのPICKはオフェンス、傭兵、冒険家、野人とCOAⅣまでに見られた救助が手堅いラインナップ。対する相手のPICKは彫刻師。相手に有利なマップだ。ファーストチェイスは奈奈の傭兵。彼はチェイスが得意であり、傭兵の肘あてを使用し解読時間を稼いでいく。肘あてを使い切り、ダウンしたところでこの編成で一番解読が遅い野人がほぼ解読終了。チェイス中に冒険家の宝探しの邪魔をしなかったため、初吊りで2台解読が終了。野人が救助に成功し、ここからは傭兵がセカンドチェイスで残りの解読器を上げる時間を稼ぐのが重要。冒険家、そしてオフェンスがそれぞれ解読器を1台上げ、解読の残りは半分。傭兵が吊られてしまうも、オフェンスはラグビーボールをまだ一度も使っていないため、救助前と救助後にタックルを決め、傭兵がダウンしたところで通電。引き留めるを持っていたために連続での4逃げにはならなかったものの、余裕の3逃げで初勝利へ王手をかけた。

 

 第2ラウンド後半。相手のPICKは傭兵、祭司、墓守、昆虫学者。小程のPICKは血の女王。鏡を出すのにそこまで障害物がないマップであり、調子にやや不安はあるが、落ち着いていれば勝てると踏んでの選択だろう。ファーストチェイスは墓守。神出鬼没を使用し、ダメージを与えていく。スコップを使用し院内へと逃げ込んだ墓守を倒し、地下へと吊った。ここで救助に向かったのは傭兵。だが傭兵は途中でダメージを受けての救助となってしまう。墓守は祭司の補助があり、院内2階まで逃げるものの、そこは冷静に反対側に鏡を使用し、墓守を見極めてダウンを取る。再度地下へと吊られた墓守を次に救助に来たのは昆虫学者。昆虫の群れを使わずに救助に来た昆虫学者は途中でダメージを受け、墓守の救助には成功したものの、墓守は階段で通常攻撃に当たりダウン。そして逃げ惑う昆虫学者も落下攻撃によりダウン。墓守を地下でしっかりと飛ばし、昆虫学者を持ったまま最後の解読器近くであえて昆虫学者を落とし、上げようとしていた傭兵に展開を読んだ小程はダメージを与え、ダウンさせる。そこで祭司がなんとか解読器を上げるも、相手は引き留めるを持った血の女王。神出鬼没で逃げる祭司を倒し、吊ったところで半ダメージを与えられた傭兵、そして昆虫学者は鏡を出した状態の血の女王に近付くことができず、そのまま2逃げ。引き分けを取ったMRCのストレート勝利となった。

 

 この試合のMVPは奈奈。画家でのハッチ逃げ、そして傭兵でのチェイスが決め手となった。

 

 MRCの勝利に、WeiboのトレンドではMRC勝利がトレンド入りし、多くの人が彼らの勝利を喜んでいた。彼らは長く苦しいトンネルからやっと抜け出すことができたのである。

 

 結局、彼らが夏季予選で勝利した回数は4回。だがその4回全てがミラクルと言えるような試合であったし、今まで勝つことができなかったFPX.ZQを相手に前半ストレート負けした際よりも多い点数でストレート勝利したということは彼らの自信に繋がったのではないだろうか。何より、絶不調だった小程の調子が少しだが上がってきたこと、そしてサバイバーの連携が良くなってきたことは秋季に向けての良い予兆ではないだろうか。

 

 しかし、中国の政策により未成年者の奈奈、そして日暮戈薇。彼らは規制により第五人格というゲームそのものができる時間が週に3時間ほどに制限されてしまうことになり、チームを離れることになってしまった。まとまりはじめた最中、結局MRCのメンバーはまた変わることとなってしまった。

 

 メンバーが変わっても、彼らはまた私たちに奇跡を見せてくれるだろうし、何度負けたとしてもその奇跡を諦めていないはずだ。私たちが彼らを信じ続けている限り、彼らは何度でも立ち上がり、また彼らしか作り出すことのできない奇跡を見せてくれるだろう。秋季予選は間近。奇跡の青年たちよ、次のシーズンへと突き進め。We are Miracles!